Match Review

Match Review「修正できた左サイド、修正できなかった(しなかった)右サイド」20210326 国際親善試合 日本U24代表[JPN] vs アルゼンチンU24代表[ARG] (Japan U24 vs Argentina U24)

Match Review

南米予選をトップ通過したアルゼンチンU24代表は、その前評判に違わぬ実力をみせつけた試合。本大会前の試合はこの日本戦しかない予定というアルゼンチンに対して日本は手を焼く。前日のA代表が快勝だったことも相まって、もどかしい展開のなか、前半の問題点を修正できた左サイドと修正できなかった右サイド。キープレーヤーの田中碧不在を強く感じてしまった本戦を振り返る。

2021/03/26 国際親善試合

日本U24代表 vs アルゼンチンU24代表

0 – 1

日本U24代表(横内 昭展):3421
アルゼンチンU24代表(フェルナンド・バティスタ):442

前半

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日本はオフェンス時4231、ディフェンス時422となる。対するアルゼンチンもオフェンス時はワントップ気味の442、ディフェンス時442となる、ミラーゲームの展開。

日本のビルドアップ

日本はGK+CBでビルドアップを開始するが、アタッキングサードに攻め込めず、ボランチに戻す、以下の図のような状況に陥ることが多かった。ここまでSBもオーバーラップを仕掛ける場面もなく、ボランチも飛び出していかないため、明らかに前線の人数が不足している。

17分ごろの状況

前線の選手もボールをもらいに下がってきて、自陣から攻め上がるような形もあった。注目の三苫が自陣でドリブルから状況を打開しようとするも、1人目かわしたとしても2人目3人目のところでボールロストしてしまい、カウンターを受けてしまうなど手詰まり感が否めない。このあたり、このチームの中心選手の一人でもある、出場停止中の田中碧がいれば前線に飛び出すなど変化をつけられるのではと思ってしまうので、その不在を感じてしまう。

アルゼンチンのビルドアップ

日本がビルドアップに苦しむ半面、アルゼンチンはCBが自身を持ってビルドアップを開始しているのが印象的。最悪CFのガイチにロングボールを蹴っておけば何とかなるというリスクマネジメントもできているのか、スムーズに回せている。解説でも話していたが、日本に比べパススピードが1段速いところもそのスムーズさにつながっているのだろう。

前半まとめ

昨日のA代表も原則同じフォーメーションなので、その比較という意味では日本は右サイドの攻撃に物足りなさを感じる。三好とそのフォローに来ることもある久保、いずれもレフティということもあり、中への切り返しからのインスイングのクロスやシュートというイメージがある。
また、サイドバックに関して、LSBの旗手はハイライトにも残っている通り、数回攻撃参加していたが、A代表の山根に比べ、RSB菅原の攻撃参加が少なすぎる印象。チームの方針なのか、本人の判断なのかは不明だが、左サイドの三苫のドリブル突破と、右サイドの切り返しさえ気をつけていれば大怪我をしなさそうというアルゼンチンの考え方も見えてくる。

後半

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前半の問題点2点について、、改善できた点、できなかった点

  1. サイド攻撃が活かしきれない
  2. ビルドアップが停滞気味

スプリント開始のタイミングを改善したい右サイドバック

前半にも気になっていたRSBの攻撃参加が少ない点について、端的な場面があったので紹介したい。ハイライトにこそ残っていないが、三好が高い位置で前を向いてボールを保持するチャンスの場面。ここで、三好は最終的にPA内の角に切り替えしてのミドルシュートを狙うが枠を外してしまう。シュート打った瞬間菅原はPAの手前の位置(下図)にいる。三好のシュートブロックにいっているのがアルゼンチンのLSBなので、菅原がオーバーラップしかけることができていればシュートコースも広がっただろうし、菅原に渡してのクロスという選択肢も広がったはず。ゴール裏からのカメラのリプレイを見る限り、菅原のスプリントの開始が数秒早ければ下図の上の青線の位置にはいれたと思う。このあたり、月曜の第2戦でどうプレーするのかは注目したい。

55分の三好のシュートシーン

左サイドバックが中央に入ることで変化をつける

一方のビルドアップについては改善が図られた。LSBの旗手がボランチの位置に入り、ボランチの渡辺が一つ前の位置をとることで左右非対称な布陣となり、アルゼンチンのRSHを無力化できているようにみえる。解説の中村憲剛さんが話していたが、技術などに加え「戦術眼を持っている」旗手ならではの修正力なのかもしれない。

57分の状況

アルゼンチンの守備戦術変更

アルゼンチンは65分ごろから1ボランチにして、4141のような形に守備陣形を変更。日本がサイドを広く使えだしてきているところもあるため、サイドのスペースを埋めに行くような修正と思われる。日本も同じタイミングで左サイドのLMF、LSBを2枚替え。相馬は内に絞ってボールを受け、その空いたスペースを古賀がオーバーラップするという展開をつくることに。三苫がサイドに張って、その内側を旗手が使うのと対称的な戦術。

最終盤にも多彩な攻め手を見せるアルゼンチン

アルゼンチンはLSBである3バレンスエラがボールを回しながらインナーラップし中央へ。更にインサイドハーフの8コロンバットが、LWGのような位置に飛び出し、3バレンスエラからスルーパスを受ける。最終的に8コロンバットのクロスに飛びこんだのはLIHの17ゴンサレスの選手。
後半もそろそろ終了間際というところながら、頭を使った攻め手を見せるアルゼンチン。金メダルを獲るということは、ここまでできてこそ、ということを感じさせられる。CFを囮につかいながら、頭を使った巧みな攻め手を見せる。時差のあるアウェイ戦で必ずしもコンディションよくないはずのなか、この最終盤でも惰性でプレーしないあたり、「金メダルを獲るチームとはこういうチームだ」と見せつけられる思い。

83分の状況

一方の日本はというと、2列目の選手が個人技でしかける展開が多く、チームとしての成熟度の低さを感じざるを得ない。

まとめ

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得点こそ1対0と、惜敗と呼べるかもしれないが、印象としては完敗。久保や三苫の個人技術はもちろんこの試合でも際立っていたが、アルゼンチンは全員がそつなくスキルフルだった。加えて、試合の駆け引き(「プレスに来ているから、裏に出そう」「機を見てインナーラップしよう」等)や、何より対人(マークの相手をにらみつける、シュートブロックに対して間合いが近い)の強さなど、メッシやアグエロのころのようなメジャーネームは不在ながら「強豪国」とは何かというものを感じることができたのではないだろうか。海外で活躍する選手も多く存在するチームながら、根っこの部分でまだまだ世界のトップチームの常連とはなれていない現実を見せつけられた思いがある。アルゼンチンもコンディションを整えられ、キープレーヤーである田中碧が出場するだろう3日後の試合は、言い訳できない一戦となるはずなので、ある意味本大会の気持ちで優勝候補でもある相手チームに対して戦う姿をみてみたい。

もう1点気になったのが、A代表とU24の優先度。素人考えでは「3ヶ月後に迫った自国開催のオリンピック」は「1年半後のW杯」より優先すべきではないかと思う。それでも、監督はA代表戦を指揮し、U24メンバーでもある富安はA代表に招集。戦略レベルでの代表チームのマネジメントコンセプトがどうなのか聞いてみたいところ。

外部リソース

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