前半何もできないまま、3点のビハインドとなってしまった神戸。過密日程のなか、モチベーションの維持も難しいゲームとなったが、最終的にはそれを跳ね返す、まれに見る逆転勝利を呼び込んだ。両チームとも、どのようなシステムで望んだのか?
■北海道コンサドーレ札幌[SPP](ペトロヴィッチ):3421
■ヴィッセル神戸(三浦 淳寛):442
前半
札幌のビルドアップ
札幌は中央のCB+ダブルボランチ+GKの4人でビルドアップ開始。3CBの両サイドのCBが高い位置取りが特徴。
アタッキングサードにおいて、5レーンの全てに人を配置する格好で、神戸としては守備の狙い所が絞りづらいはず。札幌の選手がパスを出した後、一気にアタッキングサードに駆け上がっていく攻撃的な姿勢が印象的。
神戸のビルドアップ
神戸はオーソドックスな442を守備時もビルドアップ時も維持する方針。一方の札幌は3142のようなかたちでディフェンス。もはや、スタメン紹介のときの3421というかたちはOn the ball, Off the ballいずれにも当てはまらないようにもみえ、とても興味深い。神戸はグラウンダーのショートパスで組み立てたい意図がみえるが、札幌の詰めも早くシュートシーンまでたどり着けないまま時間がすぎる。
前半まとめ:ビルドアップの札幌、カウンターの神戸
自陣からのビルドアップがシュートまでいけているという意味で札幌のビルドアップに手を焼く神戸、という展開。神戸に関しては、自陣からのビルドアップがトップの選手に渡るまでにディフェンスに引っかかってしまうため、ビルドアップが完結しない。中盤でのディフェンスからのミドル気味のカウンターによる攻撃でいくつかチャンスメークするも、必ずしもやりたいサッカーができているか?というとそうではなさそう。
ゲームとしては、シュートシーンを多く作っていた札幌、特に7:ルーカスのいる右サイドから多くチャンスを作っていて、前半終了間際に、ついにPK獲得から先制。アディショナルタイムにもPKで追加点と、ゲームの行方を大きく決めてしまいそうな展開となった。
後半に向けての展望
神戸は、ボランチの展開が単調になってしまっているようにもみえる。
後半
開始早々の落ち着かない展開のなかで、札幌に3点目が生まれる。前半の展開に加え、この3点という点差はセーフティリードにも思えたが、結果的にはここから神戸が逆転することになる。そのストーリーを探ってみたい。
神戸はビルドアップの形を変更
神戸は後半頭から選手交代し、ビルドアップの形を変えたようにみえた。前半は前後左右のバランスが均等にとれていた442だったが、後半からは、1トップ2シャドーというか、LWGとRMFが張り出したかたちの4133のようなかたちだろうか。神戸5:山口のポジションが1つ上がったようなかたちで、ハーフタイムの監督インタビューにもあったように、「横並びでない」少しイレギュラーな形の布陣を敷いてきた。神戸の前線が3〜4枚に増えたため、札幌は4〜5バックという形に押し込まれる。
札幌は1点差に詰め寄られる
神戸のシステム変更に加え、ミスからの失点も喫してしまった札幌は、18:チャナティップに替えて、6:高嶺を投入。チャナティップに比べ、低い守備位置につく高嶺。札幌は、神戸11:古橋や、31:中坂の曖昧なポジションに手を焼いていたので、その対策でディフェンシブサードを固めてきた意図を感じる。
結果的には、思ったように機能せず、PKで同点に追いつかれてしまう。
決勝点のシーン
同点ゴールもゴールキックをこのサイドに蹴り込んだところから発生したが、決勝ゴールもこのサイドから。このシーンの少し前に札幌のLMFである4:菅をペトロヴィッチ監督は交代しているが、すこしこのサイドをやられていると感じていたのだろうか。とはいえ、ゴールシーンは、神戸5:山口の「個」の力によるところも大きい。走り込むタイミング、決定力といい、驚異を与えることがみせつけた。
試合の分かれ目
両チームともにPKによる得点もあった中で、神戸5:山口蛍の2得点は高い技術、決定力、戦術眼に裏打ちされたもの。このあたり、昨シーズン、トップ下のポジションを経験していたこともつながっている気がするし、3点ビハインドのなか、更なる失点を喫してしまう恥やリスクを承知で、ボランチの山口のポジションを1つ上げた三浦淳寛監督の手腕も光ったとも言える。「攻撃は最大の防御」とはいうが、まさにその言葉がぴったりなゲームだった。